家の秘密の通り道

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May 21, 2019 12:00
生まれて最初に住んでいた家は2階建ての極々平凡な建物だった。垣根に囲まれている0.5平方メートルの前庭とか、車が一台入れる車庫とか、贅沢ではないが、ある程度、快適に暮らせるための特徴があるという、アメリカの郊外の家としてはありふれた家だった。両親は数年前に(だけで?)移民しただし、父親は新卒として仕事をし始めたばかりなので、うちはお金を節約するために、家の外をほとんど飾らないことにしていた。

しかし、私たち三人兄弟の子供時代は平凡なものではなかった。家の外には飾りがなかったが、家の内にはたっぷりあった。その飾りは旗や花束のようなものでもなく、会社に設計され生産されたようなものでもなかった。それは簡単に言うと、玩具が多くはない子供の想像力というものだった。想像力によって、平凡なものでも、非凡なものになることはできるのだ。飾りはそもそも、普通のものをより特別にするものだけなのではないか?

家には地下室があった。そこには小さいバー付きの大きな部屋があった。その隣には溜まった埃と散らばった木片と蜘蛛の乾いた死体だらけの工作室があった。それから、一番奥には洗濯室があった。一階のお手洗いには、洗濯室とつながっている通り道があった。洗濯物を地下室まで持ち運ぶことを省くために、お手洗いの流し台の下にある引き出しみたいなものを開けて、直接その中に洗濯物を投げ込むと、洗濯物がすべて洗濯室においてあるかごにきれいに落ちて積み重なっていく。

男の子にとって、「洗濯物の通り道」は魔法的なものだった。階段を下りずに、一階から地下室まで直に行けるということはなんと不思議だったのだ。したがって、言うまでもなく、我々は洗濯物の代わりに、自分こそが通り道に入ってみた。落下して固い地面にぶつからないように、手足を通り道の壁につけながら、注意深く下りるならば、大丈夫だった。最初から最後まで、その短い「旅」は冒険的だった。例えばその入口ときたら、見た目は普通の引き出しだったが、その取っ手を引いたら、中にはジャボンやシャンプーなどの類のものがおいてあるのではなく、真っ黒な穴が空いているのはなんとスリリングだった。まるで新次元への洞窟のようなものだった。

ある時、我々は洗濯物の通り道を通して、お客さんを大変びっくりさせた。娘が三人いる一家だった。学生時代からの友達だったし、みんなが集まると賑やかになることもあって、両親は率直に、しかもからかっているかのように、我々三人兄弟と向こう側の三人姉妹との見合いを意味ありげに相談していた。我々は嫌と思って、いつもその可哀相な三人姉妹をいじめていた。殺された虫(一般の少年は虫退治が好きだ)がセロハンテープでページに貼ってある切り抜き帳を見せたり、相撲取りの相手にさせたり、真冬でも水鉄砲を打ったりしていた。しかし、一番ひどかったのは、洗濯物の通り道を通して、相手を驚かせることだった。

我々子供六人が一階に遊んでいるとことだった。兄が言ったのだろう。「新しいパンダのぬいぐるみを見せたいけど、地下室の洗濯室に忘れちゃったんで、取りに行ってくれない?」と十二歳の長女に頼んだ。「了解!」と素直に言って、地下室へ向かって行ったら、兄がお手洗いの中へ駆け込んで、通り道へすっと飛び込んで下りた。長女が洗濯室に着く前に、兄はもうそこに待っていた。

「うぁーー!」長女の叫び声は一階からもはっきり聞こえた。長女が二階まで素早く舞い上がったかのように、階段を駆け上って我々残りの子供四人に危うく突き当たるところだった。「S君がテレポートしちゃった!」と幽霊を見たかのように必死に叫んだ。「ついさっき一階にいたけど、あっという間に地下室に現れたのよ!」次女と三女も驚愕のあまりで泣きわめいていたが、その一方、私と弟は仕方なく笑わずにはいられなかった。

大騒ぎになっているのを聞いて、両親が駆けてきた。物事の実相が現れると、我々三人兄弟はもちろん、両親に叱りつけられた。お客さんが帰った後にも、我々は罰を与えられた。台所の角に一時間もじっと立たされていたが、その間は父親の抑えようとしている笑い声が確かに聞いたと思う。